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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)1984号 判決 1988年1月14日

原告

大日建機株式会社

被告

株式会社吉岡水道工業所

ほか一名

主文

一  被告らは各自、原告に対し、金五七万一〇〇〇円及びこれに対する昭和六一年七月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は原告勝訴の部分に限り仮り執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、原告に対し、金一一〇万九五六〇円及びこれに対する昭和六一年七月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

次のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 昭和六一年七月二九日午後一時五五分頃

(二) 場所 大阪府高槻市道鵜町二―八六一―一先路上

(三) 加害車 被告梅本章次(以下「被告梅本」という。)運転の普通貨物自動車(大阪四三き六一六八号)

(四) 被害車 原告所有、訴外冨田孝運転の普通貨物自動車(大阪四六の九三六号)

(五) 態様 加害車が被害車に追突した。

2  責任原因

被告らは、次のとおりの理由により、本件事故による原告の損害を賠償すべき義務を負う。

(一) 使用者責任(民法七一五条一項)

被告株式会社吉岡水道工業所(以下「被告会社」という。)は、被告梅本を雇用し、同人が被告会社の業務の執行として加害車を運転中、後記過失により本件事故を発生させた。

(二) 一般不法行為責任(民法七〇九条)

被告梅本は、加害車を運転中、前方不注意、ハンドル・ブレーキ操作不適当の過失により、本件事故を発生させた。

3  損害

原告は、本件事故により被害車を損壊され、次のとおりの損害を被つた。

(一) 修理代 七八万九〇六〇円

被害車を廃車してこれと同種、同等の車両を再調達するためには、車両本体価格六六万五〇〇〇円、エアコン等付属品価格一五万五〇〇〇円、自賠責保険料・自動車税・自動車重量税・手続諸費用八万六六〇〇円、無線機取付費用二万七〇〇〇円、車体に原告会社名を塗装する費用二万四〇〇〇円の合計九五万七六〇〇円が必要であり、そのほか被害車の廃車費用五〇〇〇円も要するから、右修理代を上回ることが明らかであり、被害車を修理するのが相当である。

(二) 代車代 一二万〇五〇〇円

被害車と同種、同等の車両を調達するためには、少なくとも二か月が必要であり、この間二三万八七〇〇円の代車代を要するから、被害車を修理する場合の右代車代を上回ることが明らかである。

(三) 弁護士費用 二〇万円

4  本訴請求

よつて請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は本件事故発生の日である昭和六一年七月二九日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による。)を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の(一)ないし(五)は認める。

2  同2の(一)及び(二)は認める。

3  同3の(一)ないし(三)は争う。

被害車は、昭和五七年四月九日初登録された車両であり、本件事故日までには相当長期間を経過しているところ、同車の新車価額は九五万八〇〇〇円であり、その耐用年数は五年であるから、同車の減価計算につき定率法によると、同車の本件事故当時の価額は一七万〇五二四円となるから、同車は経済的に修理不能というべきであつて、右価額をもつて同車の車両損害と認めるべきである。

三  抗弁(損害の填補)

本件事故による代車代については、被告らは原告に対し、レンタカーを貸与し、その費用九万二五〇〇円を負担しているから、原告の代車代の請求には理由がない。

四  抗弁に対する認否

抗弁は争う。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  交通事故の発生

請求原因1の(一)ないし(五)の事実は、当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  使用者責任

請求原因2の(一)の事実は、当事者間に争いがない。

従つて、被告会社は民法七一五条一項により、本件事故によつて原告に生じた損害を賠償する責任がある。

2  一般不法行為責任

請求原因2の(二)の事実は、当事者間に争いがない。

従つて、被告梅本は民法七〇九条により、本件事故によつて原告に生じた損害を賠償する責任がある。

三  損害及び損害の填補

1  車両損害等 五二万一〇〇〇円

証人石塚誓夫の証言及びこれにより真正な成立が認められる甲第一号証によれば、本件事故により被害車が損壊し、その修理費として七八万九〇六〇円を要することが認められるところ、被害車の本件事故当時の価額が右修理費を下回り、経済的に修理不能であるか否かにつき争いがあるので、これについて検討する。

中古車の事故当時の価額は、原則としてこれと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定められるべきであるところ、成立に争いがない甲第五号証の一、二によれば、被害車と同一の車種・年式・型の自動車の本件事故当時の中古車市場での価額は、四六万五〇〇〇円であることが認められる。弁論の全趣旨により真正な成立が認められる甲第六号証、証人石塚誓夫の証言及びこれにより真正な成立が認められる甲第一一号証によれば、被害車が昭和六一年四月に車検を受けた際、二五万八七六〇円を要したことが認められるが、前記認定の中古車の市場価額は、当該自動車が定期的に定められた車検を受け、平均的な水準に整備された状態にあることを当然の前提としているものと考えられるから、車検の際当該自動車の価値を特に高めるような特別の整備がなされたという事情が認められない限り、これによつて価額が増したと認めることはできず、本件被害車の場合においても、このような事情を認めるに足る証拠はなく、結局前記認定の市場価額をもつて本件事故当時の被害車の車両本体の価額であると認めるのが相当である。

次に、原告は、被害車と同種、同等の車両を再調達する場合、エアコン等付属品を装備する費用として一五万五〇〇〇円が必要である旨主張し、成立に争いのない甲第三号証によれば、昭和六二年二月一日の時点において、新車のトヨタカローラバン・ワゴンにエアコンを付ける場合一五万五〇〇〇円を要することが認められるが、被害車の場合、本件事故によつてエアコンにも損傷を生じたか否か、被害車に装備されていたエアコンを再調達した自動車に付け替えることができないのかどうか、当該エアコンの経過年数等が明らかでないから、右主張はこれを認めることができない。

また、原告は、被害車の代替車両の再調達費用として、自賠責保険料・自動車税・自動車重量税・手続諸費用で合計八万六六〇〇円を要すると主張し、証人石塚誓夫の証言及びこれにより真正な成立が認められる甲第四号証によれば、原告において昭和六二年五月から六月頃、取引先のトヨタカローラ新大阪株式会社にその時点での被害車と同種、同等の車両の購入価額を見積もらせたところ、指定看板一式、カーエアコン、ルームマット、サイドバイザー、標準工具一式、スペアタイヤ付きで三五万円であり、そのほかに自賠責保険料等として八万六六〇〇円が必要である旨の見積もりを受けたことが認められるところ、自賠責保険料及び自動車税は、本件事故により被害車の代替車両を再調達するために新たに必要となつたものではなく、原告が自動車を所有することに関して必要となる費用であるから、これを右再調達費用に算入するのは相当でないし、自動車重量税は車検証の交付を受けるときに要する税金であるから、前記のとおり中古車の市場価額の中で評価ずみのものであると考えられ、手続き諸費用についてはその内容が明らかでなく、これらの費用を右再調達に必要な費用であると認めることはできないといわざるを得ない。

証人石塚誓夫の証言及びこれにより真正な成立が認められる甲第九、第一〇号証によれば、被害車の代替車両を再調達する場合、被害車に搭載されていた無線機の積み替え費用として二万七〇〇〇円を、被害車の車体に記入されていた原告会社名の看板の塗装費用として二万四〇〇〇円を、被害車の廃車費用として五〇〇〇円をそれぞれ要することが認められる。

以上において認定した事実によれば、被害車を廃車してこれと同種、同等の自動車を再調達する場合には、合計五二万一〇〇〇円が必要となることが認められるところ、前記認定の被害車の修理費用は七八万九〇六〇円であり、右再調達費用を上回ることが明らかであるから、被害車の修理は経済的に不能であり、右再調達費用をもつて被害車の車両損害等とみるのが相当である。

2  代車代

証人石塚誓夫の証言及びこれにより真正な成立が認められる甲第七号証、弁論の全趣旨により真正な成立が認められる乙第一ないし第三号証によれば、原告は、昭和六一年七月三〇日から同年八月一三日まで、及び同月一八日から同年九月五日までの期間被害車の代車としてレンタカーを使用したが、このうち同年八月二九日までレンタカー使用料合計九万二五〇〇円については被告ら加入の保険会社が負担し、その後の期間の使用料二万八〇〇〇円については原告が支出したことが認められるところ、被害車の代替車両の再調達に要する期間に関しては、前掲の石塚証人はその証言の中で、中古車市場では右代替車両の数が少ないのでその入手は困難である旨供述するが、前掲甲第四号証によれば、前記トヨタカローラ新大阪株式会社は右代替車両の納期を一五日と見積もつていることが認められ、本件事故当時においても長くとも一か月以内にはその入手が可能であつたと考えられるから、原告が被害車の代車を必要とした期間は一か月間とみるのが相当であり、前記認定の通り原告は本件事故後一か月間被告加入の保険会社が費用を負担したレンタカーを使用していたから、これ以上被告らに対し代車代を請求することはできないというべきである。

四  弁護士費用

本件事故の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告が被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、五万円とするのが相当であると認められる。

五  結論

よつて、被告らは各自、原告に対し、五七万一〇〇〇円及びこれに対する本件事故発生の日の翌日である昭和六一年七月三〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 細井正弘)

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